kubolog : クボログ

久保のブログ

子供が大人に近づく瞬間 「月と蟹:道尾 秀介」を読んだ。

何にでも、きっと理由ってのがあんだ。
世の中のことぜんぶにな、ちゃあんと理由がある。

いままで読んでいた自分が読んでいた、
道尾作品とはすこし毛色が違う作品。
(といっても4冊目か・・・。)

著者の作品によく見られる、
ストーリーの結末が、予想を大きく変えていく展開も特にない。

でも、また違う意味でこの作品は面白い。

月と蟹
月と蟹

posted with amazlet at 10.12.31

道尾 秀介
文藝春秋
売り上げランキング: 50822

主人公は、小学生。
重松清の描く小学生とはまた違う雰囲気。
どちらかというと、すこし大人っぽいかな。

父親の死後、祖父の田舎へ転校し、
祖父がまきこんだある事件がきっかけで、
クラスの人間ともなじめないでいた。

そこへある男の子が転校したきた。
お互い話す相手がいない同士、友人となった。
2人は海の近くの山の上に秘密の場所をつくった。
そこでひそかに岩場でとってきたヤドカリ飼う。

2人はその場所で、
ときどきヤドカリの殻をライターで熱して、
ヤドカリの中身をだしたりしてあそんだ。

そして、そのヤドカリを燃やしそのヤドカリを
願いをかなえてくれる”ヤドカミさま”と読び、
その”ヤドカミさま”に、さまざまなお願いをした。

あるとき、ひょんなことから、
2人の間にある女の子が加わることになり、
3人の中の様々な感情が変化していく・・・。

小学生が大人へと成長していく段階で感じるのであろう、
友情と恋愛のジレンマ、他人からの恨みやねたみへの恐怖、
いじめに対する恐怖、様々な嫉妬、家族への不満などなど、
読んでいてひしひしと伝わってきた。

読んでいて、
なにか、もどかしい感じ。

自身が成長の段階で、
なにを感じ、どんな行動をとっていたかは
断片的にしか覚えていないけれど、
こんなことを感じていた時期もきっとあるんだろうなと思う。

きっと多くをしらない子供だからこそ、
先入観なく感じられる感覚があって、
そういうものがなんとなく感じられる作品
ではないかと思う。