子供が大人に近づく瞬間 「月と蟹:道尾 秀介」を読んだ。
何にでも、きっと理由ってのがあんだ。
世の中のことぜんぶにな、ちゃあんと理由がある。
いままで読んでいた自分が読んでいた、
道尾作品とはすこし毛色が違う作品。
(といっても4冊目か・・・。)
著者の作品によく見られる、
ストーリーの結末が、予想を大きく変えていく展開も特にない。
でも、また違う意味でこの作品は面白い。
主人公は、小学生。
重松清の描く小学生とはまた違う雰囲気。
どちらかというと、すこし大人っぽいかな。
父親の死後、祖父の田舎へ転校し、
祖父がまきこんだある事件がきっかけで、
クラスの人間ともなじめないでいた。
そこへある男の子が転校したきた。
お互い話す相手がいない同士、友人となった。
2人は海の近くの山の上に秘密の場所をつくった。
そこでひそかに岩場でとってきたヤドカリ飼う。
2人はその場所で、
ときどきヤドカリの殻をライターで熱して、
ヤドカリの中身をだしたりしてあそんだ。
そして、そのヤドカリを燃やしそのヤドカリを
願いをかなえてくれる”ヤドカミさま”と読び、
その”ヤドカミさま”に、さまざまなお願いをした。
あるとき、ひょんなことから、
2人の間にある女の子が加わることになり、
3人の中の様々な感情が変化していく・・・。
小学生が大人へと成長していく段階で感じるのであろう、
友情と恋愛のジレンマ、他人からの恨みやねたみへの恐怖、
いじめに対する恐怖、様々な嫉妬、家族への不満などなど、
読んでいてひしひしと伝わってきた。
読んでいて、
なにか、もどかしい感じ。
自身が成長の段階で、
なにを感じ、どんな行動をとっていたかは、
断片的にしか覚えていないけれど、
こんなことを感じていた時期もきっとあるんだろうなと思う。
きっと多くをしらない子供だからこそ、
先入観なく感じられる感覚があって、
そういうものがなんとなく感じられる作品ではないかと思う。