血のつながりのない親への葛藤 「龍神の雨:道尾 秀介」を読んだ。
どれだけの不運に見舞われても、どれだけ苦しい毎日でも、死にたいなんて思ったことは一度もない。
思ったら負けだからだ。自分自身の人生に負けるほど馬鹿馬鹿しいことはない。
やはりこの作者はすごい。
この作品の最後まで、走り抜けるように読んだ。
血のつながる両親に先立たれ、
血のつながっていない、戸籍上だけの親とくらすことになった、
2組の兄妹とある事件を通じてリンクすることになる。
彼らは血のつながりのない親に
困惑し、自信の中にある迷いをふっしょくできずに、暮らしていた。
そしてある事件をきっかけに
彼らの運命が大きく変わることになる。
血のつながっていない親を持ったことがない自分にとっては、
正直理解しがたい感情ではあるけれど、
おなじ状況になればきっと困惑すると思う。
でもその困惑の中で、時間がすべてを解決し、
受け入れることになると思う。
そもそも血のつながりがあるから、親として成立するのかが疑問だ。
血のつながりがある親がおこす、虐待のニュースはあとをたたない。
(というよりも増えてきているのではないだろうか。)
血のつながりがあろうとなかろうと、
お互いに理解しようとする”思いやり”があれば、
親子関係というものは十分成立するのではないだろうか。
親を亡くし、生きることになった
子供の迷い、苦悩、葛藤…、そんなものが読んでいて、
すこし理解できた気がする。
結末も、道尾作品らしい、
予想ができない展開になるので、おすすめの小説です。