牡蠣フライの話がとても面白い 「村上春樹雑文集」を読んだ
言うまでもなく、この世に永久運動というようなものは存在しない。
しかし手入れを怠らず、想像力と勤勉さという昔ながらの燃料さえ切らさなければ、
この歴史的な内燃期間は忠実にそのサイクルを維持し、
我々の車両は前方に向かって滑らかに――
あくまでいけるところまでということだが――進行し続けるのはあるまいか。
僕はそのような物語の「善きサイクル」の昨日を信じて、
小説を書き続ける。
村上春樹のコラムやライナーノーツ、インタビューなど
著者自身がセレクトした今では読めないお話が掲載されている本、
「村上春樹雑文集」を読んだ。
やはりこの人の文章は非常に面白い。
2作目の「牡蠣フライの話」を読むだけでも、
この本を買う価値があるかもしれない。
(個人的にこの話が好きだった)
そして、話題となったイスラエルでのスピーチ
このスピーチは、改めて読んでも、
ぐっとこみ上げるものがある。
もしここに硬い大きな壁があり、
そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、
私は常に卵の側に立ちます。
そして著者のストイックな精神も
本書の中でも垣間見える。
前向きな姿勢が取れなくなったら生み出される
作品から力や深みは消えてしまう。
村上春樹ファンはもちろん、そうでないひとも、
読んでいて楽しめる作品だと思う。
↓ 以下に、読んでいて気になったフレーズをメモ。
僕らはある意味では孤独ではあるけれど、ある意味では
孤独ではないのだ
世の中のものごとには多くの場合、
結論なんてないのだ。
価値判断の絶え間ない堆積が僕らの人生をつくっていく
偏見に満ちた愛こそは、僕がこの不確かな世界にあって、
もっとも偏見に満ちて愛するものの一つなのです。
音楽にせよ小説にせよ、いちばん基礎にあるものはリズムだ。
自然で心地よい、そして確実なリズムがそこになければ、人は
文章を読み進んではくれないだろう。