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久保のブログ

無料ビジネスを考える。 『フリー:クリス・アンダーソン』を読んだ

人間はものが潤沢なことよりも、希少なことを理解しやすいようにできている。
なぜなら私たちは生存のために、脅威や危険に過度に反応するように進化してきたからだ。
私たちの生存戦術のひとつに、ものがなくなりそうな危険に注意を向けることがある。
進化の観点から言えば、潤沢にあることはなんの問題にもならないが、希少な場合は奪い合いになる。

最近、無料のものって多いよね??

・マンガも無料
・SNSも無料
・電話も無料
・ゲームも無料
・音楽も無料

でも、その無料のビジネスってものが、
いろんなパターンがあって、どのように儲けているのか?
知ってるようで知らない。

その無料ビジネス(フリー)を、
行動経済学、心理学、マズローの欲求段階説やらを取り出して、
最近の事例(おもに海外)とともに説明した本。

「フリー ~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」

を読んだ。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン
日本放送出版協会
売り上げランキング: 2

ロングテール理論を提唱したクリス・アンダーセン氏の書籍。
分厚くてなかなか読み応えのある本でした。
(中盤は、いらないような・・・。)

いろんな、商品、サービスのコモディティ化が進む。
そして、それらの商品の価格は、限界費用までさがる。
そうなってくると、貨幣経済だけはなく非貨幣経済が台頭する。

===
消費者がお金を払うのが「支払い能力に応じて」から「必要に応じて」になったのだ。
===

消費者は、
お金を払うだけではなく、

・払わずにもらう。
・自らが作り出す。

といった新たな市場を作る。
そこにあるのは、

・注目経済
・評判経済
・贈与経済

だったりする。

人々が、自分の欲求を満たすために、
行動を起こし、それを他の人が無料で利用する。
情報がネットワークによりつながる。
そして、無料の仕組みができあがる。

これらは、アトム(原始)なものではなく、
ビット(情報)が台頭してきたことで実現することになる。

===
人は創造的になり、何かに貢献をし、影響力を持ち、
何かの達人であると認められ、そのことで幸せを感じる。
こうした非貨幣的な生産経済が生まれる可能性は、数世紀前から、
社会に存在していて、社会システムとツールにとって完全に実現される日を持っていた。
ウェブがそれらのツールを提供すると、突然に無料で交換される市場が生まれたのである。
===

そしてこの無料(フリー)パターンには、
大きく分けて、3つのパターンが存在する。

(1)直接的内部相互補助
フリーでないほかのものを販売し、そこからフリーを補填する。
・携帯電話(本体無料:通信費でもととる)
・無料購読期間
・駐車場無料
・ひとつ買うと、もうひとつ
・送料無料

(2)三者間市場 or 市場の二面性
第3者がスポンサーとしてお金を支払うけれど、多くの人々にはフリーとして提供される。
・コンテンツは無料のサイト(広告費でまかなう)
・クレジットカード
・女性無料、男性無料のバー
・子供無料、大人有料

(3)フリーミアム
フリーによって人を惹きつけ、有償のバージョン違いを用意する。
・低品質のMP3無料、高品質は有料
・オンラインゲーム無料、さらにゲームを楽しむ場合は有料
・ウェブコンテンツ無料、印刷したものは有料
・スカイプ
・基本情報無料、詳細は有料
・音楽ゲームは無料、追加楽曲は無料

例えば、mixiなんかは、
広告費から設ける、市場の二面性
プレミアム会員から徴収する、フリーミアム
を利用することで、儲けを出してるんだろうね。

とはいえ、mixi広告が効果が薄いなんて、
エントリーを見た気がするけど・・・。

まぁ、失敗・成功はたくさんあるとして、
これらがフリーの収益のモデルになると。

あと、音楽業界の収益モデルの部分も気になったので、
取り上げたいと思う。
これからの音楽業界は、ただCDや着メロを販売するだけではなく、
360度モデルで設けるやり方になってくると。

===
360度モデルとは
ツアー、音楽著作権使用量、CM出演、そしてグッズなど、
アーティストのキャリアのあらゆる面を代理するビジネスモデル
===

実際、違法版が95パーセントを締める中国では、
このモデルでの成功例がいくつかあるみたい。

従来からのビジネスモデルに固執し、
単純に音楽(CD・着ウタ)だけを売るだけではだめだと。

つまり時代の変化なんだろうな。

ステレオタイプにとらわれて、単視眼的な発想をしてはいけない。

時代が変わった、消費者のライフスタイルが変化した、環境が変化した、
これらを踏まえ、フリーの概念も頭にいれて新たなビジネスモデルを模索すること。
それが、大事になってくるのだと思う。

===
フリーは魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけでは金持ちにはなれない。
フリーによって得た評判や注目を、どのように金銭に変えるかを創造的に考えなければならない。
その答えはひとりずつ違うはずだし、プロジェクトごとに違うはずだ。
その答えがまったく通用しないときもあるだろう。それは人生そのものとまったく同じだ。
ただひとつわからないのは、失敗の原因が自分の貧困な想像力や失敗への恐れにあるのに、
それをフリーのせいにする人がいることだ。
===

◆事例メモ:
・デンマークのスポーツクラブ
会員が週に1回利用すれば、会費が無料。
⇒お互いが気分がいい。
⇒顧客の長期的維持に貢献

・無料ゲーム
高級アイテムなどを直接販売するのではなく。
時間の短縮を実際のお金で販売する。
⇒お金のある人は、時間を金で買うと・・・。
⇒そうすることでお金による不公平感をなくす。

◆抜粋メモ:
===
人間はものが潤沢なことよりも、希少なことを理解しやすいようにできている。
なぜなら私たちは生存のために、脅威や危険に過度に反応するように進化してきたからだ。
私たちの生存戦術のひとつに、ものがなくなりそうな危険に注意を向けることがある。
進化の観点から言えば、潤沢にあることはなんの問題にもならないが、希少な場合は奪い合いになる。
===
心理的取引コスト
考えることに費やされるコスト。人間は生来、怠け者なので、できるだけ物事を考えたくない。
だから私たちは、考えずにすむものを選びやすいのだ。
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たいていの商取引にはよい面とわるい面があるが、何かが無料!になると、
わたしたちは悪い面を忘れさり、無料!であることに感動して、
提供されているものを実際よりずっと価値あるものと思ってしまう。
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心理学では、これを「模倣欲求」と呼ぶ。
基本的には、他人がしていることを自分もしたいと思うことだ。
なぜなら、他人の決断こそが自分自身の決断を正当化するからだ。
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低い限界費用で複製、伝達できる情報は無料になりたがり、
限界費用の高い情報は高価になりたがる。
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既存企業より新参企業のほうがフリーを利用しやすいのだ。
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従来のメディアにおける広告ビジネスとは、新聞、雑誌、テレビを問わず、稀少な資源、
つまりスペースを売ることです。ところがウェブにはスペースがほぼ無限に存在します。
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SF作家にはひとつの不文律がある
物理学の法則を破るのは、ひとつの小説につきひとつかふたつめでで、
それ以外は現実世界を踏襲する、というものだ。
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フリーミアムを収益モデル
ユーザー全体に対する有料ユーザーの割合:5%を損益分岐点に。
望ましい割合は10%。
それ以上の有料ユーザーがいる場合は、無料版の性能を絞り込みすぎていて最大数の
潜在顧客を捕まえていない可能性がある。
一方、割合が10%未満のときは、無料ユーザーを支えるコストが高すぎて利益を
あげられていない恐れがある。
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