予想できないストーリー「向日葵の咲かない夏」
自分がやったことを、全部そのまま受け入れて生きていける人なんていない。
どこにもいない。
失敗をぜんぶ後悔したり、取り返しのつかないことを全部取り返そうとしたり、
そんなことやってたら生きていけっこない。だからみんな物語をつくるんだ。
昨日はこんなことをした、今日はこんなことをしてるって思い込んで生きている。
見たくないところは見ないようにして、見たいところはしっかり憶え込んで。
「向日葵の咲かない夏」を読んだ。
前々から、評判は聞いていて、
買っていながらずっと読んでいなかった。
読んでみて、
評判どおりのすごい作品だと思った。
小説を読むとき、物語を読み進めるにつれて、
自分の中に仮説が出来上がる。
こんなことがあったから、こうなる。
こういう理由から、犯人はこれじゃないか。
とか。
小説を読むとき、
その仮説を立てるステップだったり、
その仮説が検証されていくステップだったりが、
自分の中で面白さに変わる。
でもこの小説は、その仮説をただの思い込みにすぎない、
陳腐な考えのひとつにしてしまう。
自分は、ロジカルに仮説を立てていく、
でも、結末は、ラテラルに作られている。
実際自分の考えたことが読んでいて、
どんどん塗り替えられることになる。
えっ、こうきたの?こんなのアリなの? みたいな。
この感覚がまた楽しい。
自分自身の思い込みがいかに強いかを実感した。
今まで感じていたことがまったく変わる感覚、
読んでいて、ぞくぞくした。
そんな小説だった気がする。